【水理学】小オリフィス ―ベルヌーイの定理の応用―<h1>【水理学】小オリフィス ―ベルヌーイの定理の応用―</h1>
NN広場
農業農村工学のための総合サイト
NNテックブログ
農業農村工学向け解説記事
NN広場 農業農村工学のための総合サイト NNテックブログ 農業農村工学向け解説記事
【水理学】小オリフィス ―ベルヌーイの定理の応用―
水理学
開水路、流体力学、三力、土木

1.はじめに

今回は、ベルヌーイの定理の応用例として小オリフィスを取り上げます。 ベルヌーイの定理については前回の記事をご覧ください。

2.オリフィスとは?

小オリフィス3D.png オリフィスとは水面の側面や底面に開けられた孔のことです。ベルヌーイの定理を使うことでオリフィスからの水の流れを計算することができます。オリフィスには大オリフィスと小オリフィスがあります。縮流部(オリフィスから流れ出た水流が収縮する部分)での流速が一様とみなせるものを小オリフィスと呼びます。 小オリフィス.png

3.オリフィスの計算

ベルヌーイの定理は次式で表されます。

\[ \dfrac{v_{1} ^{2}}{2g} + z _{1} + \dfrac{p_{1}}{\rho g} =\dfrac{v_{2} ^{2}}{2g} + z _{2} + \dfrac{p_{2}}{\rho g} \]

ここで、 \(v _{1} \)、\(v _{2} \):流速 \( (m/s) \) \(z _{1} \)、\(z _{2} \):高さ\( (m) \) \(p _{1} \)、\(p _{2} \):圧力 \( (Pa) \) \( g \):重力加速度\( 9.8(m/s ^{2}) \) \( \rho \):水の密度\( 1,000 (kg/m ^{3}) \)

小オリフィスの点1(水面)と点2(縮流部)にベルヌーイの定理を適用すると次式になります。

\[ \dfrac{v_{1} ^{2}}{2g} + z _{1} + \dfrac{p_{1}}{\rho g} =\dfrac{v_{2} ^{2}}{2g} + z _{2} + \dfrac{p_{2}}{\rho g} \]

点1での圧力は静水圧分布とし、点2での圧力は大気圧として、\( p_{2} \)を0とすると

\[ \begin{align} \dfrac{v_{1} ^{2}}{2g} + (z _{1} - z _{2}) + \dfrac{0}{\rho g} &=\dfrac{v_{2} ^{2}}{2g} + \dfrac{0}{\rho g} \\ \dfrac{v_{1} ^{2}}{2g} + H &= \dfrac{v_{2} ^{2}}{2g} \end{align} \]

さらに接近流速による速度数等\( h_{a}\)を無視できる場合は次式となる。

\[ \begin{align} \dfrac{v_{1} ^{2}}{2g} + H &= \dfrac{v_{2} ^{2}}{2g} \\ 0 + H &= \dfrac{v_{2} ^{2}}{2g} \\ v_{2} &= \sqrt{2gH} \end{align} \]

例えば、水槽の容量が大きくてオリフィス(孔)が小さい場合には接近流速による速度水頭を無視することができます。

続けてオリフィスからの流量を求めてみましょう。 まず、オリフィスからの流速と実際の流速には相違があります。これを補うために流速係数\( C_{v} \)(0.96〜0.99)を用いてオリフィスからの流速\( V \)は \( V = C_{v} \sqrt{2gH} \)で表されます。 流量は流速と断面積の積で表されますが、点2(縮流部)は収縮しているため、オリフィス(孔)の面積をそのまま流速にかけると誤差が生じます。そこでオリフィス(孔)の面積を\( A \)とし、収縮係数\( C_{c} \)(0.64)を用いると、点2の断面積は\( C_{c}A \)と表せます。以上より、オリフィスからの流量\(Q\)は次式になります。

\[ \begin{align} (流量) &= (流速) \times (断面積) \\ Q &= C_{v} \sqrt{2gH} \times C_{c}A \\ Q &= C_{v}C_{c}A \sqrt{2gH} \end{align} \]

ちなみに流速係数\( C_{v} \)と収縮係数\( C_{c} \)の積\( C_{v} C_{c}\)を流量係数と呼びます。

孔の大きさと水面から孔までの距離が分かれば流量が求められるのは面白いですね。

4.例題

簡単な例題ですが、小オリフィスの流量を計算してみましょう。 水面から孔までの距離\( H \)を\( 2 m \)、オリフィスの直径を\( 1 cm \)とします。 流速係数\( C_{v} \)を\( 0.98 \)、収縮係数\( C_{c} \)を\( 0.64 \)とします。

流量\(Q (cm ^{3}/s) \)は次の通りである。

\[ \begin{align} Q &= C_{v}C_{c}A \sqrt{2gH} \\ &= {100 ^{3}} \cdot 0.98 \cdot 0.64 * \pi \left( \dfrac{1}{2 \cdot 100} \right) ^{2} \cdot \sqrt{2 \cdot 9.8 \cdot 2} \\ &= 308.4 \\ \end{align} \]

5.おわりに

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

今回の記事の内容はいかがだったでしょうか? 本記事が水理学の勉強を支える一助になれば幸いです。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう。

今後も農業農村工学(水文学、かんがい排水、土壌物理、水理学)を中に記事を執筆していきたいと思います。 リクエスト等も受け付けておりますので、ご遠慮なく連絡ください。 Twitterアカウント:エビぐんかん@6LxAi9GCOmRigUI メール:nnCreatorCircle@gmail.com

引用・参考文献

(1) 大津岩夫,安田陽一,高橋正行,高橋迪夫,長林久夫,藤田豊:水理学,理工図書株式会社,pp.84-86,2007. (2) 近畿高校土木会:解いてわかる! 水理,オーム社,pp.54,2012.